「遺言書保管制度」について

去る12月11日、「法務局における遺言書の保管等に関する政令」が交付されました。

昨年7月に交付された「法務局における遺言書の保管等に関する法律」に対応した政令となります。

こちらは数年前から進められている家族・相続法の改正・新設のなかで、実務的な面からは特に注目度の高い制度と言えます。

「遺言」の種類とメリット・デメリット

死後の財産の承継や処分の方法を定める「遺言」は、大きく分けて、遺言をする者が一人で作ることができる「自筆証書遺言」と、公証役場に赴いて作成し、役場で保管される「公正証書遺言」の二種類があります。

このうち「自筆証書遺言」は、手軽にできる反面、方式に不備があるために無効となったり、紛失してしまったり、害意あるものによって破棄・隠匿される危険性があります。

また、正しく作られた自筆証書遺言であっても、家庭裁判所に申し出て、裁判官の立会いの下で開封する「検認」が必要となり、事後の手続が煩雑になります。

検認後も、自筆証書遺言は公正証書遺言と違って、「謄本」の発行ができないため、万が一、手続中に紛失等されますと、取り返しがつきません。

そのような理由から、生前に支払う費用は多くなりますが、安定性や、遺された相続人等が極力困らないように、という点では「公正証書遺言」がベストといえます。

法務局でできる新制度「遺言書保管制度」

今回の「遺言書保管制度」は、作成した自筆証書遺言を、遺言者本人が法務局に持参し申請することで、遺言書が法務局に保管されるというものです。

この制度を使うことで、自筆証書遺言の破棄隠匿の危険がなくなります。また、これにより保管された遺言は、「検認」が不要となる旨、法律で定められていますので、死後の手続負担の軽減も期待できます。

前述のように、公正証書遺言は確実で安定性のある方式ですが、財産のあり方や遺言の内容によっては「そこまでしなくてもよい」という要望が数多くあるのは、実務をしていてよく感じることです。

「日本人は文化的に、責任意識や自己管理の姿勢になじまないから遺言に向かない」というステレオタイプよりも、制度的なインフラの不足という現実により、遺言を書かずじまいになる人が多いという印象です。

そのような意味で、この新制度は、現行の遺言のバリエーションに対して「帯に短し襷に流し」の感慨を持つ人にとって、大きなメリットを伴いうると考えられます。

制度のより具体的な詳細は・・?

今回交付された「政令」は、おもに法務局でこの制度を実際に運用する公務員の担当者(遺言書保管官)を名宛人にした条文が多く、運用側の実務マニュアル的な面が強いものです。

しかし、なかにはわれわれ利用者向けの条文もあり、運用ルールのなかから、利用者目線で注目情報が見えてくるところもあります。

例えば、今回の政令の第3条で、「遺言書を保管してもらっている間に、住所に変更があった場合には届け出なさい」とされています。本人確認のためと思われますが、これは利用者にとって少し面倒なルールかもしれません。

また、遺言書が民法で定める様式に則って作られているかという、形式的チェックを、どこまで法務局が責任を持ってやってくれるか、ということは、遺言の効力保全に関係する重要なところで、私も興味を持っていました。

政令の2条では、「こういう場合には、申請段階で理由を付して却下します」という却下事由が定められていますが、この中に「民法の自筆証書遺言の要件に当てはまらないときは却下します」と明確に読めるものがあるか、ちょっと微妙なところです。

この点、公布前に行われたパブリックコメントでは;

「遺言書,申請書,その添付書類から,遺言書が無効であることが外形上明確である場合には「法第1条に規定する遺言書でないとき」に該当し,却下されることとなります。」

という回答がされており、民法上の形式要件について、一定のチェック機能は期待出来ると思われます。

もっとも、確実に責任を持って保証してくれるとは期待しない方が良いと思います。同じ法務局が運用する登記制度もそうなのですが、間違った申請をしたことによって、なんらかの損害があった場合、法務局の審査過程での見落としがあったとしても、基本的には申請人の責任とされてしまう事例が多いのです。

遺言作成はあくまで自らの責任のもとに、ときに司法書士のような専門家のサポートを受けつつ、慎重・確実に行うことをおすすめします。

そのほか、利用者としてとうぜん気になる手数料額や、手続に必要な書類など具体的・実務的な詳細は(よくあるパターンなのですが)、内閣の政令ではなく、運用する法務省が別にルール(省令)を定めるとされており、まだ決定していません。本制度が運用開始する施行期日は、令和2年7月10日ですので、それまでに公布されるものと思われます。

というわけで、期待されつつ、まだ未決定・未知数なところも多い新制度ですが、新しい情報があり次第、お届けしたく思います。

2020.3.25追記;手数料について

3月23日に「法務局における遺言書の保管等に関する法律関係手数料令」が交付され、手数料額は以下の通りとなりました。

遺言書の保管申請 3900円
遺言書の閲覧請求 1700円
遺言書保管事実証明書の交付請求 800円
遺言書情報証明書の交付請求 1400円

参照(官報): https://kanpou.npb.go.jp/20200323/20200323h00214/20200323h002140004f.html

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