テレビ電話会議について――コロナウイルス流行期間中の定時株主総会対応②

2020年初頭から流行している新型コロナウイルス(COVID-19)の影響により、毎年行っている定時株主総会対応に関し、中小企業の現場で、少なからざる混乱や疑問が生じることが予想されます。

本稿では、中小企業法務に携わる司法書士の立場から、今回の状況に対応するための「テレビ電話会議」についてご紹介し、留意点も含めて解説します。

 

テレビ電話会議とは

法人は大小を問わず、そのガバナンスのために重要な意思決定を行う機関を有します。

株式会社の場合、会社の所有者である株主が行う「株主総会」や、株主に選ばれた役員が集まり、業務執行の決定を行う「取締役会」などがこれに当たります。

これら会議体は、役員の選任や、決算の承認、多額の財産の処分や剰余金の配当など、重要な決定を明確化するために、メンバーが一堂に会したうえ、「過半数」や「3分の2」などの決議形式で行うのが原則です。

しかし、支社が各地(又は各国)に複数ある場合や、災害等により、現実に集まることが困難なケースを想定し、会社法は制定当初から「テレビ電話」方式での出席が可能な形で立法されました。そのことは当時出版された会社法立案担当者の書籍などからも明らかであり(たとえば相澤・葉玉・郡谷『論点解説 新・会社法』(商事法務)、472頁「株主総会におけるリアルタイムなインターネット投票」)、法務実務家の間では定着しています。

また、記録管理や書面の要件など、具体的な会社法務事務を規律する「会社法施行規則」の条文も、それに合わせて規定されています。下に挙げるように、「当該場所に存しない」出席メンバーがいる場合には、その旨を議事録に記録しておくよう求められているわけです。

 

会社法施行規則

72

(前略)

3.株主総会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。

一 株主総会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が株主総会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)

(以下略)

 

101

(前略)

3.取締役会の議事録は、次に掲げる事項を内容とするものでなければならない。

一 取締役会が開催された日時及び場所(当該場所に存しない取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人又は株主が取締役会に出席をした場合における当該出席の方法を含む。)

(以下略)

 

一部ニュースや新聞では、「オンラインの株主総会は、海外ではすでにできるようになっているのに日本ではできない」「株主ゼロ人の総会が今回初めて可能になりつつある」といった印象をあたえる報道がなされていますが、法律上は不正確です。

技術上・セキュリティ上の懸念、またITリテラシーがない株主の権利確保という面から慎重論が考えられ、後述のように「会場」の設定が必要である等の規制があるのは事実ですが、会社法制上は「テレビ会議出席」の活用でオンライン会議や株主ゼロ人総会は可能であり、10年以上前に法案作成を担った当時の官僚や学者もそう言い続けてきた、というのが真実でしょう。

ただし、現実に採用をする企業が少なかったことも事実であり、判例等のノウハウも少なく、これからの実績の蓄積が待たれるのが実情といえる部分もあります。

テレビ電話会議のやり方

テレビ電話会議による出席は、画像と音声の配信によって、「情報伝達の即時性と双方向性」を備えることが必要とされています。逆に言えば、それを満たせば特に会社法上制限はありません。

専用のサテライト中継設備でなくとも、スカイプや、ラインの動画グループトーク、昨今有名になったズームなどの、パソコンやスマホ対応のアプリでも十分成立します。

議事についても、現実に集まって行う総会で進めるのと同じように進めていただいて構いません。

ただし現行日本の会社法上の規制、及び私の見解では、以下の点で注意が必要と考えられます。

 

「会場」の設定

現行会社法上は、テレビ電話会議出席を認める場合でも、株主総会または取締役会の「メイン会場」は設定する必要があります。

これはあくまで、対面が原則の「通常の総会」のひとつの出席方式としてテレビ電話出席があるという建付けによるためです。

よって、招集の際には株主には「会場」が通知され、株主はいずれの出席方法をとるかを選ぶことになります。もしもテレビ電話ではなく直接会場に赴く形で出席したいメンバーがいる場合、会社はそれを許容すべきということになります。

※もっとも、この点、今回のCOVID-19の流行を受けて出された経済産業省の見解では、株主の人数制限や、事前登録制を採用することも、その旨の通知や登録の平等を確保する等、株主の平等に配慮すれば差し支えないとされています。(https://www.meti.go.jp/covid-19/kabunushi_sokai_qa.html

もとより、株主が数百人~単位で、なおかつ日々変動する上場企業の場合とは異なり、中小企業では、事前にコンセンサスを取っておけば、議長を務める代表取締役のいる本社会議室をメイン会場として設定し、PCで「株主ゼロ人総会」を開催することはまったく問題ないでしょう。

 

システムトラブルによる中断への対応

オンラインの使用にはシステムトラブルがつきものです。

とくに複数の人間が参加するオンラインコミュニケーションの場合、一部だけログインがうまくいかなかったり、いったんつながってもシャットダウンを起こしてしまう等が想定されます。

総会や役員会決議は、重大な決定にかかわる場合が多く、後々でいさかいが起こった際に決議無効(又は取り消し)確認訴訟を提起されるなどのリスクがあります。よって議事と決議の手続きは出席者のコンセンサスを取り、しっかり行う必要があります。

また、多数のシステムトラブルで決議要件を満たす決議ができなくなってしまったり、議長がシャットダウンしてしまい、議事が進められなくなった場合等は、会議そのものが頓挫してしまいます。

そうした場合の対応として、決議をいったん「中断」していただき、改めて日時を設定し、途中からまた開催することが考えられます。(なお、これはオンライン出席に限らず、通常の場合でも可能な対応です。)

よって、その場合にそなえて、期日を通常より前倒しにすることが推奨されます。また、万一のシステムトラブルが発生した場合には、中断の判断を議長に一任する決議や、予備日に関する決議を予め行っておく等の対応も考えるべきでしょう。

 

セキュリティへの配慮

オンライン会議を行う場合、こちらが最も懸念されるべき事項かと思います。新型コロナウイルスによって注目された会議アプリについて、ハッキングなどセキュリティの問題により、使用禁止を定める企業や国家が出てきたという報道もありました。

オンラインをめぐる技術上・セキュリティ上の問題は、ビジネスでの利用促進を阻む大きなネックです。個人情報流出によって会社側の責任が問われる可能性もありますので、ツール選定やハッキングへの対策は、通常以上に気を使い、万全に行う必要があると考えられます。

 

まとめ

前回から二回にわたって、おもに、上場企業のように流動的ではないものの、外部株主を含めて複数の株主が存在する中小企業を想定し、定時株主総会が通常通り開けない場合の代替策について記述しました。

ご紹介した手法は一般的なものですので、定款状況等によっても、できることは異なってきます。また前述のように、とくにテレビ会議方式については未知数の部分やセキュリティの問題もありますので、前回ご紹介した「みなし決議(書面決議、決議の省略)」や「委任状の活用」なども含め、個別状況に応じて対応を判断し、選択していくことになるでしょう。

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