休眠会社・法人の「みなし解散」にご注意ください。ー企業法務のメンテナンスー

株式会社は、定款の定めに従い、1~10年に一度は「役員改選」の時期が来るようになっています。

任期を過ぎた役員(取締役・監査役・代表取締役等)は、役員の地位に引き続き留まる場合でも、改めて株主総会や取締役会等で改選手続きを行い、登記申請をしなければなりません。

この登記をしないまま放置している会社は、下記のような「休眠会社」の扱いを受けている場合があります。

長い任期で設計した会社等、中小企業の役員変更登記は忘れがちになりやすいものです。

登記簿や定款をご確認いただき、不安な場合には司法書士への相談をお勧めします。

 

休眠会社のみなし解散とは

12年間(一般社団法人の場合には5年間)、役員変更を含む登記の変更を行っていない会社を「休眠会社」(一般社団法人の場合には「休眠一般法人」)と呼びます。

法務局では、平成26年度以降は毎年、10月~12月にこの休眠会社・休眠一般法人の整理作業を行っています1

プロセスとしては;

① 休眠会社又は休眠一般法人について,法務大臣による公告及び登記所からの通知を行い、

② ①の通知に対して「事業を廃止していない」旨を2か月以内に届け出ない会社については、その2か月後に「解散」したものとみなし、解散登記を行う(みなし解散)

というものです。

郵送物に気づかず、放置しているだけで、会社が解散状態となり、事業をしていないものとされてしまう可能性があるのです。

 

ちなみに、今年度(令和1年度)初めてこの整理の対象となる会社としては、

・平成19年に最後の役員変更登記を行った会社

・平成26年に最後の理事変更登記を行った一般社団法人

などが挙げられます。

 

事業を続けるには――3年以内に「会社継続登記」が必要

現在も活動中の会社について、法務局により「みなし解散」の登記がなされてしまった場合、株主総会での決議など手続きを経たうえで「会社継続登記」を行い、会社を事業状態に戻す必要があります。

この継続登記は、解散したものとみなされた日(通知があった10月から2か月後の、同年12月)から必ず3年以内に行う必要があります。3年経過したみなし解散会社は、継続することはできず、清算手続きを行っていったん廃業するしかありません。

したがって、事業継続を望むみなし解散会社の場合、一刻も早い手続対応が必要となります。

それでも放置した場合――登記の「閉鎖」

会社の意思に基づく通常の解散の場合、株主総会が選任した「清算人」が、会社財産の清算を行い、財産をゼロにしたうえで会社を閉じます(清算結了)。

※解散~清算結了の手続き概要はコチラ

ところが、「みなし解散」となった会社については、その事実にも気づかなかったり、または事実上も事業停止している等の理由から、そのまま放置されてしまうことも少なくありません。

この場合、どうなってゆくのでしょうか。

登記記録を管理する法務局の登記官に向けたマニュアルでは、解散登記後10年経過した会社については登記記録を閉鎖できる旨が定められています(商業登記規則第81条)。

この規定によって、会社は財産の清算を行わないまま、閉鎖されてしまうことになります。

 

このパターンで閉鎖された会社の場合、会社所有の不動産や預貯金が存在するのにもかかわらず、その持ち主である会社が存在しない状態に置かれるため、

・不動産を処分しようとしてもできない

・会社名義の預貯金を解約して払い戻すことができない

・株式を承継した相続人に負担が引き継がれるなど、のちの相続にまで影響する

といったトラブルに見舞われかねません。

 

会社・法人には法務メンテナンスが必要です

・長い任期で設立した会社で、しばらく変更をしていない

・休眠会社があると親族から聞いていたが、どうなっているのかわからない

・法務局から通知が来たから返信だけしたけれど、それだけで大丈夫?

上記のような心配がある方は、会社法務のメンテナンスとして、どんなことでも気兼ねなくご相談ください。

 

≪脚注≫

  1. 法務省HP「休眠会社・休眠一般法人の整理作業について」 http://www.moj.go.jp/MINJI/minji06_00082.html 2020.1.17閲覧

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